第一歌集『ウォータープルーフ』
ご無沙汰しております。
このたび、沼尻つた子の第一歌集
『ウォータープルーフ』を青磁社より上梓いたしました。
発行日は2016年9月7日、私の父の祥月命日です。
作歌をはじめて10年間の作品をまとめました。
200頁、404首を収録です。
タイトルはこのblogの由来でもある中城ふみ子賞次席連作からとり(作品は未収録)、
歌壇賞次席「温度差の秋」、同候補作「雨に勤める」(ワーキング・イン・ザ・レイン
から改題)、塔作品特集第一席「忘れる木偏」、塔新人賞受賞「あたたかな灰」等を
含みますが、大幅に推敲・改編をしております。
栞として、心の花の伊藤一彦氏(「沼の縁より、さらに底へ」)
未来短歌会の服部真里子氏(「短歌を書くということ」)
そして塔短歌会主宰の吉川宏志氏(「物が見え過ぎる眼」)が
それぞれ身に余る文章をお寄せくださいました。深く感謝いたします。
出版に際しまして永田淳さん、装丁は花山周子さんにご尽力いただきました。
通販は青磁社へのメール注文、ウェブ書店Amazonにて、いずれも送料無料です。
Amazonは在庫切れ表示でも、ご注文しだい順次入荷・発送がされます。
また、紀伊國屋書店(新宿本店)、葉ね文庫(大阪)三月書房(京都)でも
取り扱っていただきます。本体1700円+税です。
お手に取っていただければ幸いです。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
*自選*
吾にふたつ静かの海のあるごとし永久脱毛ほどこしし腋
姉弟はひたいを寄せて待ちており絵本のなかに月が昇るを
履歴書を三味線として流れゆく瞽女(ごぜ)であるなり派遣社員は
PTA総会終えてママという蒸れた着ぐるみのチャックを下ろす
担任に添削されたる詩をひとつ裏の畑に燃した夏あり
ホスピスの通路を父と腕組んでバージンロードのように歩いた
伊那谷の底(そこい)に白き川はあり吾を産む前の母を泳がす
借りたての部屋に横たえる 神様という大家にいつか帰す体を
店員用Tシャツに「がんばろう日本!」自分では読めぬ背中へ刷らる
新聞が新聞紙となる明けがたに行方不明者は死者へと変わる
捨ててきた「もし」の種から咲く花はあんなにきれいで見てはいけない
酔うたまま眠りしひとの頬を舐め麒麟はラベルへと戻りたり
浅いカップ分厚いコップ汚しつつドリンクバーへ向かう 生きたい
(モデルはわが家の飼いねこ、雌1歳です)